最後に海外直接投資の純流入額について見る。海外直接投資の純流入額は、外国資本による各国の経済、社会、政治などの総合評価と考えることができる。また、海外直接投資はこれまでの東南アジアの経済発展の主要な推進力であったことから、これからの経済発展を占う上で重要な指標である。
図 3-5 直接投資純流入額の変化
タイへの純流入額は1993年から96年まで20億ドルの水準を維持した後、通貨危機後の97年、98年にも上昇し、98年には73億ドルを記録した。しかしその後減少し、2000年には33億ドルまで低下している。直接投資純流入額のこれ以上の低下は、経済発展軌道の回復を困難にすると考えられる。
フィリピンへの純流入額は、1999年に6億ドル弱の水準を経験したが、それ以外は毎年15億ドルから20億ドルの水準であり、他の2国と比べると大きな落ち込みはない。しかし一方で爆発的な流入も起こっていない。
インドネシアへの純流入額は、1995年、96年に大きく増加し、96年には62億ドルを記録した。しかしアジア通貨危機後急速に純流入額が減少し、98年以降は直接投資の流出が発生している。流出額は2000年にかけてさらに増加し、同年には1997年の純流入額同水準である45億ドルが流出してしまった。これはインドネシアの経済面の問題だけでなく、民族紛争、暴動、度重なる政権の交代などに象徴されるの社会危機の影響も反映していると考えられる。このような外国資本の流出が続けば、インドネシアの経済発展軌道の回復は困難になってしまうであろう。